所々海草や木屑が落ちてある綺麗とも汚いとも言い切れない平凡な季節外れの砂浜に適当に印をつけた。
あたしが、という人間が、ここに存在してるよって小さな意思表示。
砂浜に小さく書いた自分の名前はなんだか頼りなくて、ちっぽけな自分そのものだと思ったら笑えてきた。
だって精市にはたくさんの仲間と、揺るがない自信と居場所があって
あたしにはないものばかり。眩しいものばかり。
「、あんまりそっちに行くと濡れるよ」
「んー」
「ほら、おいで」
なんだか精市の周りの空気までもキラキラして見えるのは、冬の澄んだ空気や夕陽に透ける綺麗な髪のせいだけじゃないはず。
「精市、」
「…ダメだよ」
座り込むあたしの隣に立つ精市の薬指と中指を握って見上げれば、セリフを先回りしての返答
「まだなにも言ってないじゃん」
「の考えてることぐらいわかるよ」
「…柳はいいって言ったもん。真田だって、」
「俺は反対だよ、マネージャーなんて」
精市は頑なに首を立てに振ろうとはしない。いつもこう。
いいじゃん。マネージャーの人数足りないってジャッカルはぼやいてたよ?あの真田だって了承してくれたんだよ?
部活の度に精市とフェンスで隔てられるのだってもうやだよ。他の女の子が側にいるなら尚更。
「テスト期間中には赤也の英語だって教えてあげられるよ?」
「…は誰の彼女?」
「…せーちゃん」
なら、わかるよね?なんてにっこり微笑まれても何も分からない。いや、寧ろわかってないのは精市の方だよ。
「ちょっとは女心ってもん、わかってよ」
鋭い精市のことだから、あたしが嫉妬や劣等感を抱えてることぐらいお見通しなんでしょ?
手元にあった小石を波に投げ込めば音もなく吸い込まれて飛沫が頬にはねただけ。
「…せーちゃんの意地悪」
頬に伝うしょっぱい水はさっきの海水なのか、あたしの涙なのか
「ほら、おいで」
握ったままだった指先を引かれて気付けは精市の腕の中
あたしの、居場所だよね?
「なんでマネージャー、だめ?精市、あたしと一緒にいたく、ないっ」
「ほら泣かないで、不細工になるよ」
「うぅっ、」
バカだねは。なんて言いながら涙を拭う唇が優しくてまた涙が出た。
「3秒で泣き止まなかったら置いて帰るよ、いち、に、さ」
「な、泣いてないもん」
「いーち、にー」
「ごめんなさい、うそ!我が儘も言わない、置いてかないで」
必死にしがみつくあたしに、喉の奥で笑い声を殺す精市
「本当にはバカだね。置いてくわけないだろ」
「だ、だって…」
精市ならやりかねないじゃん、と恨めしい視線を込めて見上げればおでこにリップノイズ
「こそ男心ってもん分かってないんじゃない?」
何のこと?と首を傾げると額、頬、瞼、鼻先にキスの雨
「精市、くすぐったい」
俺の腕の中でくすくすと身を捩って笑う
こんなに可愛いんだ、他の部員が黙ってるわけないだろ。
嫉妬に狂った俺をに見せたくないのはもちろん、部員が半分以上減ると困るしね。
誰の目にもつかないようにどこかに閉じ込めてしまいたいくらい好きだなんて、には言わないけど。
「ねぇ、唇にはしてくれないの?」
「たまにはからしてよ」
「ぇ、」
「いーち、にー、さ」
123で君の虜
(Happy Birthday o.d)
(anniversary january23)
090130
o.d処女作品は精市さんだったとのことで精市さんプレゼント★
1月23日が記念日なんで無理矢理123絡めました(笑)
dear:れんちゃん
from:みつ