004:

「いっしょにねても、い?」
静かな部屋に呟かれた言葉に、目が覚めた。そろそろ来るころだと思っていた。
「いいよ」
布団を持ち上げると、喜八郎が潜り込んできた。ごそごそと落ち着く場所を見つけると、私の寝間着をぎゅっと握りしめた。外を歩いてきた喜八郎の体は冷えていた。その体でくっついてくるものだから、私の体温もどんどん逃げていく。寒くて喜八郎を抱き寄せると、腕の中から小さな寝息が聞こえた。
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006:

音もなく部屋に侵入し、後ろ手に戸を閉めた。
「今日は駄目ですよ」
に近付こうと足を踏み出した瞬間、眠っているはずのの声が聞こえた。そのままに近付くと眠そうな目が私を見上げていた。
「障りがあるので」
「まだ……か」
「え?」
怪訝そうなを無視して布団に潜り込み、後ろからの下腹部を撫でた。まだ、足りないのか。何度繰り返しても一向に実を結ぶ気配がない、そこ。全身で私を拒絶するが憎くて憎くて、愛おしい。
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013:死に近き

終わったと思って踵を返そうとしたら視界の端に銃口が見えた。しまった、と振り返った時には引き金に力が込められていた。冷や汗が吹き出る。この後に起こることなんて容易に想像できて、強く目を閉じた。だが予想していた痛みはなくて目を開けてみると、黒いコートと血濡れの銀髪。
「ゔぉ゙おぃ、!だらしねえ、ぞ…?」
座り込んだ私に、スクの慌てる気配がする。しばらくして乱暴に頭に置かれた手に素直に目を閉じた。
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018:

、大丈夫?」
「……あめ」
虚ろな目で留三郎の首に噛みつくの顔は青白い。まあ首に噛みついたからって貧血が治るとも思えないから当然と言えば当然なんだけど。
「俺の心配をしろよ!」
「落ち着いたら横になろう?」
留三郎を無視しての頬を撫でると、目を閉じて首筋から離れた。後ろに倒れるを受け止めつつ首を確認すると見事に歯型が残っていた。役得といえば役得なんだろうけど。そう思いながらぐずるを抱え直した。
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