「忍足、眼鏡」
「は?」
「貸して」
ああ、と言って眼鏡を貸してくれる忍足。
眼鏡を受け取ってかけてみる。
あたしはどうも言葉が足りないらしい。
うーん。
眼鏡だけ言えばわかると思うんだけどなあ。
それ位察してよ、と言えば、わかるかアホ、と返ってくる。
なんだよ、氷帝の変態のくせに。
「天才や。て ん さ い!」
「足フェチ」
「…悪いか」
開き直りやがったこいつ。
大体中学生で足フェチ公言しちゃうとかどうなの。
まあエロボイスで中学生らしからぬフェロモンを出してるのは認めるけど。
「で、」
「なんでしょ」
「どうや、眼鏡をかけた感想は」
感想もなにも、伊達だから何かが変わるわけでもないんだけど。
「んー、なんも変わんない、かなあ」
そりゃそうだ。
忍足が笑う。
ちょっとむかついたから殴っといた。
なにすんねん!とか言ってるけど無視。
煩いよ馬鹿。
「どうなのかなあって」
「ん?」
「忍足には、この世界がどう見えてるのかなあって思ったんだよ」
そう。
あたしが伊達眼鏡を借りた理由はそれ。ただ知りたかったんだ。
忍足の目には、この世界がどう写ってるのか。
「ふーん。結局わかったか?」
「んーん。全然。あ、でも、」
「でも、なんや?」
「眼鏡かけてない忍足も格好良いんだね?」
そう言うと、珍しく驚いた顔をした。
けど、すぐにいつもの顔に戻って、あたしの耳元で一言。
眼鏡かけてるも結構クるで?
そう言った忍足は、優しく笑ってキスをしてくれた。
迷い込む疑問は透明に塗られた
(080202)