、Trick or treat?」

ついに、こいつの頭はおかしくなってしまったのだろうか。










「…大丈夫?」
「失礼な奴じゃの」


そう言って肩をすくめる仁王。

いや、失礼も何も。


理科室な、という謎の一言のみの仁王からのメールに仕方なく来てみれば、目の前には白衣を羽織った仁王が座っていらっしゃった。
ついでに言うと、足を組んで頬杖というオプション付きで。


一体何者ですか、貴方。


「何やってんの」
待ってた」
「いや、白衣の方ね」
「何って…仮装?」


だってハロウィンじゃし?似合うじゃろ。


って、いやいやいや。
趣旨が違う気がするんだけど。
ハロウィンって狼男とかヴァンパイアとかでしょ。
どうして白衣。
何故に白衣。

しかもそれを仮装だなんて。
おまえ、全国の理系の皆さまに失礼だよ。

謝りなさい、今すぐ。


「ええじゃろ、似合うんじゃから」
「あー…はいはい、そうですね。似合う似合う」
「適当じゃな」
「んで、なに」
「無視なんて酷いの。じゃから、Trick or treat?って言うとるやろ」


そう言ってにやりと笑う。

ははん。
そうきたか、詐欺師め。

確か、とポケットの中を漁る。
指先がお目当てのものにあたった。

こちらこそ、にやり、だ。
丸井、サンクス。

そのままそれをつかみとり、コロンと机の上に置いた。

それを見ると、仁王はつまらなそうに視線を外した。


「いらん」
「ええっ」
「ってことで、悪戯な」
「聞いといて選択肢なしか」


がたりと、椅子から立ち上がった。

そして、どこから取り出したのか、三角フラスコをゆらゆら。
そのまま距離を詰めてくる。


様になってる!
すごく様になってるよ、仁王!


だけど。

そのフラスコの中身はなんですか。
すごく濃厚なピンク色なんだけど。


「え、なにそのいかがわしい液体は!」
「惚れ薬ですけど何か」
「何か、じゃないよ!ちょ、馬鹿、近付くな!」
「実験台よろしく、ちゃん」


右腕を引かれて間近に迫る仁王の顔。
仁王はそのフラスコの中身を少し口に含むと、腰を引く私なんてお構い無しに、そのまま口付けた。

身長差のおかげで自然に上を向く格好になり、必然的に仁王がさっき口に含んだいかがわしい液体が私の方に流れてくるわけで。
口の中に広がる甘ったるい味。


なんだ、これ?

眉間に皺が寄るのがわかる。


てか、苦しいんですが!
いい加減にしろと空いている手で仁王の胸を叩くと、やっと解放された。

顔を離した後、無邪気に笑って私の頬を撫でる仁王の顔が目に入る。
直視することが出来なくて、口元を押さえて下を向いた。


「ただの、いちごみるく、じゃんっ」
「どう?惚れた?」


弾む奴の声に悔しくなって、未だ頬を撫で続ける手に噛み付く。

途端に理科室に響いた仁王の笑い声に、俯いていた顔をますます上げられなくなった。















ピンク色したカメレオン




















(081031)→(081216)



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ハロウィン企画'08フリ夢


※配布期間は終了しています。