「やっぱりね、仁王が一番かもしれない」
行為の後の気だるさの中、ひと休みをしていると隣に寝転ぶがぽつりと溢した。
目を合わせればこてんと首を傾けて言う様子は可愛らしい、けれども。
いきなり何を言い出すんだ。
「なんじゃ俺に惚れたか」
「いやだな、まさか」
あまりの迷いのなさに思わず苦笑。
笑顔で言い切るあたり本心なのだろう。
こいつはいい意味でも悪い意味でも正直なやつだから。
「意味がわからん」
「だろうねえ」
「で?」
「うん?」
「何が言いたい」
まあ別にさっきの言葉が本心だろうとなかろうと俺の知ったことではない。
俺にとってのこいつはそういう相手だし、こいつにとっても俺はそういう相手である筈。
それ以上に思うのはこいつの勝手だ。
でも面倒なことだけはやめて欲しいと思う。
「んーまああれだ。動物はですね、強い遺伝子を残そうとするわけですよ」
「、は?」
「摂理っていうか、本能らしいんだけどね」
わーすごいね、本能って!と感動してるところ悪いけど。
遺伝子?
本能?
話が見えない。
一体何が言いたいんだ。
それにしてもいきなり飛びすぎだ。
哲学?生物学?
まあどちらにしても、それは俺の守備範囲じゃない。
参謀や柳生の守備範囲だろ。
そもそもこいつこそこんなことを言うようなキャラじゃないと思う。
おまえ頭の中は空なんじゃなかったのか。
「意味がわからん」
「あらやだ、本日2回目ですわよ、雅治くん」
「はあ」
「溜め息つかなーい」
「誰のせいだと思っとる」
「誰だろう」
「おまえのせいじゃろ」
「えーなんでよ」
「馬鹿なくせに真面目なこと語り出すから」
「真面目だった?これ」
脱力感に脱力感がプラスされてそのまま枕に突っ伏した。
やっぱり空だった。
もう嫌だこいつ。
まさはるくーん?とかぺしぺし腕を叩くけど、無視だ無視。
あまりに反応がない俺に飽きたのか、叩くのをやめて今度は笑い出した。
不審に思って顔を上げると、不意打ちキス。
してやったりな顔は、さっきまでのアホなやり取りを忘れさせるくらい、妖艶。
一瞬呆気にとられた俺の首に腕を絡ませてきた。
それに、脱力感にすっかり萎えきってしまったと思われた熱に火がつく。
やられっぱなしは性に合わない。
仕返しをしようとすれば、すんでのところで止められた。
「おまえな、」
「まあまあ、そう睨みなさんなって」
「啼かすぞ」
「どーぞ。その前にちょっと」
「なん」
「さっきの続き」
「本能とかってやつか」
「うん」
このまま強制的に続行したいのは山々なんだが、続けるのもなんか癪に障る。
仕方なく続行の手を止めて話を聞いてやることにした。
すると首に回していた腕に力を込め、ぐっと俺の耳元に顔を寄せる。
そしてふっと笑って囁いた。
ああもう、早くしてくれ。
「要はね、仁王のが欲しいんだと思うよ」
動物的恋愛のススメ
(080518)