「…なに、やってんの」
「手ぇ洗ってんの」
「そんなの見りゃわかるよ」



こいつほど腹の内のわからない男もいないと思う。
や、いつもにこにこしてる幸村も似たようなものだけど、仁王はまた違う。
さらに一癖ある感じ。よく言えばミステリアス、悪く言えば胡散臭い。

それでもてるんだからさ。
仁王マジック、とも言うべきかな。





まあそんな感じで、なんだか謎が多い仁王だけど、触られるのが嫌いって話は本当みたい。
今手を洗ってるのも、大方、そんなとこでしょ。
まったく、彼女もそれなりにいて、やることはしっかりやって。
それで触られるどうこうなんてあるか、とも思うけど、本人に言わせればまた別らしい。
うーん。
あたしには理解しがたい。


「そんなに嫌なら、彼女なんか作らなきゃいいのに」
「だって向こうからよってくるんやもん」
「断りゃいいでしょ」


そんなん、相手が可哀相じゃろー、と苦笑。

嘘つけ。1ミリもそんなこと思ってないくせに。
可哀相って思ってるなら尚更ちゃんと断ればいい。
ほら、柳生くんみたいにさ。
仁王も詐欺師とか言われてるんだから、適当に言い包めて、断っちゃえばいいのに。


「いいよー、独り身も。静かだし」
「無理。俺、兎じゃから、寂しいと死ぬ」


おーい、何言いだすんだ。
兎なんて可愛らしい生き物じゃないだろ、おまえ。
むしろ狼だ狼。
このケダモノが!


ん?
でも兎か。
兎って性欲が強いんだよね。
ある意味当たってるかも?


って、あれ、狼と兎なんて正反対じゃん。
食われる方じゃん。
え、どうなの、兎。


でも、あれ、けど、とぐるぐると考えてると影。

顔をあげる前に、目の前がブレザー一色になった。
ぎゅうっと締められる感覚に抱き締められてるとわかる。
いや、わかる、じゃないよ、あたし。

説明してる場合じゃないって。


「え、なに、はっ?」
「ははっ混乱しとる」
「仁王、触るのって、」
「嫌いじゃのー」
「じゃあ、」
「でも、おまえは特別」
「はあ?」
「むしろ触りたいし」


さわ…って、おい。

とりあえず抵抗はしてみるものの、そんなのお構いなしにごろごろと擦り寄ってくる仁王はまるで猫。
狼、兎ときて、今度は猫かい。

まったく、誰だ。
仁王は触られるのが嫌いとか言ったやつ。


そう思って仁王を見てみると。



ああもう、いいや。
何もいうまい。















触れてもいいの




















(080224)



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『リリーシュシュのみる夢』様に提出。